続・僕の風景  人と絵と放浪と
文・絵 宇野マサシ
更正小学校校庭
( F15号 )
大内宿のある風景
  (会津田島)
/ '04年7月16日号掲載
 「六名館」は会津田島の駅から車で30分足らず、冬はスキー場になる山の中にある。部屋は3部屋だけ。一部屋は1階と2階あわせて4人が宿泊できるから満室になったとしても、12人が限度。風呂は檜で作ってあって冷泉を湧かしている。まわりに宿屋ペンションといった類のものは1軒もなく、別荘がちらほら。「六名館」(ペンション)の前に小ぢんまりとした池があって、夏には螢が飛ぶ。
 経営者の瀬田さんご夫婦は実家は東京都足立区で、足立区の名家の人だ。ご主人は陶芸家でもあって、電気、ガス、薪の3つの窯を持っている。客は宿泊中陶芸を瀬田さんから教えてもらい、作品を焼いてもらうこともできる。僕たちはゆくと必ず陶芸をして1日遊ぶ。
 
 はじめていった日、瀬田さんは車で近くにある大内宿に僕たちを連れていった。
 江戸時代からのたたずまいを残したこの小さな村落は、まるで時代をタイムスリップしたかのような錯覚をおこさせた。おとぎ話の桃太郎が、家の陰からふと出て来そうな気がした。村の中央を小川が流れていて水は冷たく透明だ。
 そんな風景、風情だから映画「座頭市」の撮影にも使われた。
 
 会津田島はおしなべて、大内宿を抱え込む風景をこの地域全体が持っている。なつかしい日本の風景が残っている。
 幾度も泊まりにゆくうちに、瀬田さん夫婦が何故会津田島にペンションを建てたかが理解できた。きっと、落ち着いて住める場所をそこに探し当てたのだ。「六名館」はあたたかい。
 
 僕たちの紹介で映画監督の林海象さんや、台湾テレビのプロデューサー、張光斗さんたちも泊まりにゆく。海象さんは「六名館」の雪景色を舞台にコマーシャル映像を撮影したし、張光斗さんは自分の会社(台湾)の従業員の慰安旅行に「六名館」を使う。
 瀬田さんが案内をする会津田島の風景は、ある時は酒蔵であったり<蕎麦屋であったり渓谷であったり、そのどの時にも、彼が見ている目の中になつかしき良き日本が写っているのを感じる。
 何時か僕も、それらの風景を自分の目で見、歩いて、自分の絵の中の風景として描き閉じ込めたい、と思う。
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