続・僕の風景  人と絵と放浪と
文・絵 宇野マサシ
亀戸の古い家
( 15号 )
    ナジャ
(海ほおずきの打ち上げ)
/ '04年7月30日号掲載
 映画「海ほおずき」の試写会が終わり、赤テントで打ち上げをした後、 
 「二次会はナジャでやりますから」
 と林海象さんが言った。女優の桃井かおりさん、真淵(まぶち)晴子(はるこ)さん、緑魔子さんなどが花園神社から新宿三越裏にある「ナジャ」に向かって歩いてゆき、僕はその後に従って歩いった。
 店は貸し切りで、原田芳雄さん、鰐淵(わにぶち)晴子(はるこ)さん、真淵晴子さん、四谷シモンさん、緑魔子さん、林海象さん、おくれて唐さん、合田沙和(さわ)さんなどがやってきた。延子は神戸に用事で行っていていなかった。何んだか演劇関係者の中で、僕1人が部外者の気がして居心地が悪かった。「ナジャ」の経営者安保(あんぽ)さんも元唐組、というよりその前の「状況劇場」の古参俳優だった。居心地がよくない割には興味しんしんの僕が、そこに居られたのは、酒のせいだ。2、3杯ウイスキーハイボールを飲むと落ち着いた。

 俳優の原田芳雄さんと知り合ったのは、その席だった。
 演劇論やおそらく哲学、文学の好きなその人は、「海ほおずき」の感想を僕に求め、感想をいうと、
 「それはお面白い見方だなあ」
 と言って、
 「一度家(うち)に遊びに来ませんか」
 といった。日を置かずに僕は原田さんの家を訪ねた。それから原田さんから度々誘いがかかった。原田さんも奥さんの章(あき)代さんと共に僕達の部屋に遊びにきた。
 「ナジャ」のその日の席では、隣に真淵晴子さんが座って、ウイスキーハイボールのお代わりを作ってくれた。僕は一寸夢見心地だった。居心地の悪さを気遣ってか、四谷シモンさんが、僕の肩を抱いて絵の紹介をしてくれたり、桃井かおりさんが、「宇野ちゃん、たのしくやろ!」といって抱きしめられたりしたが、やはり一寸落ち着かなかった。
 気付くと、相当に酔った緑魔子さんと僕だけが朝まで残っていて、そういう席の帰り方が僕には要領つかめなかったのだ。
 白けてきた朝の新宿の街を、僕はトボトボ歩いて部屋に帰った。

 新宿の「ナジャ」には僕の画集も置いてあるが、色々な人の写真集、作品集もある。本当は居心地の良い店だ。
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