続・僕の風景  人と絵と放浪と
文・絵 宇野マサシ
  新宿の
カメラ屋さん
( F 30号 )
公園 (新宿)
/ '04年10月8日号掲載
 新宿、歌舞伎町、その中にある新宿区役所の前の通りが「区役所通り」。新宿と歌舞伎町を分けているのが、「明治通り」。歌舞伎町と百人町を分けるのが「職安通り」というように町が道で分けられている。 
 僕が新宿を出て25年ぶりに住んだのは大久保通り添いにあるマンションで、新大久保の駅から東京女子医大病院を結んでいる通りの脇(わき)だった。駅では新大久保が一番近い。 
 マンションは13階建てで僕の部屋は13階の左端、35坪ほどの広い部屋だった。持ち主は秋田の人で、僕の絵を数点持っている蒐集家で、その人の好意で敷金も礼金もなしで借りた。 

 このマンションから新宿コマ劇場まで歩いて5分、新宿駅まで歩いて8分、歌舞伎町まで200m足らずだ。
 13階の僕の部屋の真下に歌舞伎町界隈が広がり、その向こうに壁のように都庁を中心とした新宿西口の高層ビル群が立ちふさがって、ビルの隙間(すきま)に富士山が見えた。 
 マンションの裏側は住宅街で、住宅街のつきあたりに早稲田大学理工学部の校舎がある。そのはるか彼方に茨城県の筑波山が見えた。 
 
 自転車で絵を描く僕は、コマ劇場を中心にして歌舞伎町、新宿界隈、高田馬場、西新宿、余丁町、時には渋谷、 池袋まで足を伸ばして、5年半絵を描いた。
 夕方、絵の道具をしまって、酒を飲むのは新宿西口のションベン横丁、あるいはゴールデン街。酔って帰る歌舞伎町あるいは大久保通りには様々な国の女性が立って、道行く男性を誘っている。まるで外国にいるようだ。道には香水の臭いがばら撒(ま)かれて、目を瞑(つぶ)ればまるで天国にいるように思える。
 外国の女性がたむろしている近くには必ず公園がある。そして公園に女性達を守るのか管理するのか、その国の男性達が見張っている。又、公園にはきまってホームレスが寝ている。雨の日も風の日も、公園に人がいなくなってもホームレスの人は動かずにいる。 

 都会のど真中で、人間臭い風景が息づく場所は、実は公園なのだ、ということを僕は5年半で身をもって知った。
 それは又、僕自身が身を休め心を休める、一番落ち着く場所だった。
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