山の観光の持続力とは...
(平成17年10月7日号掲載)
 炮烙(ほうろく)山 =標高684m= の山麓、豊田市下平町の民宿まる八。香嵐渓より15km、道案内もしどろな山道の行き止まりに立地する。創業1964年で鱒、鰻、松茸などの山家料理で40年過ぎた。
 現経営者の深見嘉市は、親父さんの没をうけ迷わず家族労作の民宿を受け継ぎ、余暇にジャイロ、プレーンにも挑む粋男だ。
雨後の筍のごとく巷に山の観光体が乱立し、劣敗が目につく中で健在である。持続力とはなにかを考証してみたくなる。
 10年前、或るコンサルを伴って、この民宿の蛍養殖のまっくらなフレームに入った。源氏蛍の成虫が無数に飛びかう様に唖然とするもつかの間、一角の幻想的な赤とも黄とも青とも表現のできぬ発光部所に歩を進めた。
 同行の妙齢の美女は言葉を発することもなく、わが胸元にころがりこみ、しがみついてきた。生涯を通じこんな美感動を得たのは後にも先にもない。
 一途の深見君の蛍熱によって、この界では名だたる西尾の平原の里との交流がはじまった。足助の冷田小学校区を網羅する「三州蛍の会」会長倉田鋭昭氏率いる地域づくり班とも一体となり、地道な蛍増殖活動が続いた。
 深見君はマイクロバス2台を調達し、蛍鑑賞路をつくり名ガイドもする。時同じくして、彼は県内水面養殖組合の指導を受け、チョウザメの飼育にも手がけた。このごろでは体長1m大、10キログラムの魚体からとれるキャビアは、カスピ海ものに劣らず絶妙な味で好評だ。
 先の倉田は有害獣駆除で仕止めた猪を解体しながら「持続なら地域に溶けこんだ深見君だ」と絶賛する。共通項は立地よりもヤル気であり、風土をどう生かすかにあるようだ。
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